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一七八九年七月バスティーユ牢獄の破壊にその端緒を開いたフランス大革命は、有史以来人類のなした最も大きな歩みの一つであった。その叫喊は生まれいずる者の産声であり、その恐怖は新しき太陽に対する眩惑であり、その血潮は新たに生まれいでた赤児の産湯であった。(中略)
ジャン・ヴァルジャンは片田舎の愚昧なる一青年であった。彼は一片のパンを盗んだために、ついに十九年間の牢獄生活を送らねばならなかった。十九年の屈辱と労役とのうちに、彼は知力とまた社会に対する怨恨とを得た。(中略)
大革命とナポレオンとの二つの峰を有する世潮にすべてのものを押し流し、民衆はその無解決の流れのうちに喘いでいた。ゆえに、ワーテルローの戦いと、王政復古と、一八三二年の暴動と、社会の最下層と、パリーの市街の下の下水道とが、詳細に述べられなければならなかったのである。
訳者のあとがきより抜粋

イラストレイテッドシリーズ第二弾は、ロマン主義フランス文学不朽の名作、ヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』の登場です。19世紀の傑作小説を、豊島与志雄の名訳と、ギュスターヴ・ヴリオン、エミール・バヤール他の力強い挿絵でお届けいたします。高解像度の挿絵233点を収録。リフロー型レイアウト。

ヴィクトル=マリー・ユーゴー(Victor-Marie Hugo)1802年2月26日―1885年5月22日
豊島与志雄(とよしま・よしお)1890年11月27日―1955年6月18日