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    明治時代に外国人向けのお土産として作られていた「ちりめん本」と言われる日本の童話を英訳したシリーズがあり、それを逆転させて海外の童話を日本語訳にして日本人向けに売り出そうとしたようです。

    日本で初めて翻訳されたグリム童話です。前書き部分に「西洋昔噺 第一號」と書かれてあるのですが、好評ではなかったのかシリーズ化はされずこれ1冊だけで終わっています。

     

    日本語訳されているとはいえ、明治時代の訳文ということもあり、現代文とはかなりかけ離れた文章です。現代人が普通に読むには困難だと感じ、今だとおおよそこんな感じかなという文章を付け加えました。

    グリム童話の『狼と七匹の子山羊』が原作なのですが、なぜか『八ッ山羊』と、子ヤギが一匹増やされています。
    日本のラッキーナンバーが「8」なので、なんとなく変えちゃったんでしょうかね?

     

    その他にも、助かった子やぎの隠れた場所が「柱時計の中」から、「暖炉の中」に変更されたり、最後のオオカミの死に場所も「井戸」から「川」に変更されたりしています。

     

    上のような楽しい仕掛け絵本になっています。調べてみると、どうやら江戸時代からこういった開閉式の仕掛け絵は普通にあったそうです。

     

    翻訳者の呉文聰氏は統計学者であり、日本の国勢調査の父と言われる方です。統計学の翻訳本は複数あるのですが、文学の翻訳本はこれだけのようで、どういった経緯で翻訳されたのかはまったく不明です。

    それから、絵のクレジットが原本には見当たらなかったのですが、同じ弘文社から刊行されていた海外向けのちりめん本「日本昔噺」の絵を多く担当されていたことと、絵のタッチからみて小林永濯氏に間違いないと思うので、カバーに表記することにしました。

     

    原作=グリム兄弟(Brothers Grimm)
    翻訳=呉 文聰(くれ・あやとし)1851年12月19日―1918年9月19日
    挿画=小林永濯(こばやし・えいたく)1843年4月22日―1890年5月27日