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楠山正雄翻訳、岡本帰一挿画、メーテルリンクの『青い鳥』がやっと刊行できしました!!

岡本帰一氏のイラスト満載です!!

元の書籍は上下二段組みのフォーマットなのですが、さすがにパッドでは読みづらいので、一段組みでなるべく近い印象にしてみました。こんな感じで文章にイラストが食い込んだレイアウトです。

文章に関しては、旧仮名遣いを新仮名遣いに変更。漢字に関しては、なるべく元の印象を崩さぬよう、あまりひらきすぎない(平仮名にしない)よう注意しました。そのかわり、難しいよね……現代ではあまり使わないよね……っていう個所はなるべくルビを振ってますので、小学校低学年くらいのお子さんから楽しめるのではないかと思います。

楠山正雄氏と菊池寛氏との文章比較


似たような時期に刊行した菊池寛氏の青い鳥を並べてみました。
上が菊池氏の文章です。さすがに巧い。読みやすくて適切な文章だと思うのですが……チルチルとミチルがちょっと大人っぽ過ぎる気も……。

比べて下の楠山氏の文章を読むと……チルチルはいかにも思春期の男の子の不安定さがにじみ出ているし、ミチルのややほうけた妹キャラも良い味があるように思います。

ミチルの最後の台詞、肯定も否定もしない「まあ。」で完全に楠山版「青い鳥」のとりこになってしまいました(笑)。文豪にも勝る楠山訳、恐るべし。


カラーイラストも美しいです。岡本帰一氏は、元々洋画家出身の方で、どうも楠山氏が、絵入りの児童文学シリーズを刊行する際にヘッドハンティングしたらしいです。

なので、尋常でなく絵が上手い。そして洋風。でもって海外の児童文学との相性も抜群とこういうワケなのですよ。

ところで今回底本にした「青い鳥」は、お子さん向けに訳されたややライトなものです。

楠山氏のあとがきで「劇では端折ることの多い3パートを、割愛した」と書かれているのですが、「森」の動植物たちのおぞましいまでの人間への「怒り」を、子供に読ませるのには抵抗があったのかなあ……などと感じました。

しかし、続けて読んでいくと、どうしても端折ったパートがない分、物語のふくらみがないように感じました。なにより後半の猫と犬の大喧嘩の意味ももひとつピンとこなくなってしまったので、同じ楠山氏の翻訳した大人向けの戯曲のもので補うことにしました。

大人向けなので、やや表現の難しい箇所もあるのですが、子供向けのものと語句を揃えたり、漢字をひらいたりして、なるべく違和感のでないように完全翻訳版にしております。


最後に、アメリカのパラマウント社が1918年制作した「青い鳥」の映画の紹介をいたします。

題名はその名も「The Blue Bird」……。英語表記だとちょっと間抜けですが……内容は素晴らしいんです!!

1918年制作なので、当然モノクロで無声なのですが、音楽はこの映画用に作られたもののようで、ストーリーの流れに非常にマッチしてます。

個人的に、この1918年版の「青い鳥」が、一番原作の雰囲気をうまく映像化出来ているのではないかと、ひそかに思っております。(やたら美女が出てくるのも大人目線で見ると良い感じです)youtubeのアドレスを貼っておきますので、ぜひ一度、御覧になってみてください。
The Blue Bird 1918

ちなみにシャーリー・テンプルちゃん主演の1940年版のThe Blue Birdも、なかなか見ごたえのある映画です。ただ、ミチルとチルチルの年齢を逆転させてるのが……やはり「青い鳥」は男の子の物語だと思うので……とても残念な映画でもあります。
The Blue Bird 1940

モーリス・メーテルリンク 1862年8月29日―1949年5月6日
楠山正雄(くすやま・まさお) 1884年11月4日―1950年11月26日
岡本歸一(おかもと きいち) 1888年6月12日― 1930年12月29日