タピルス第二弾は昇曙夢『ソヴェートロシヤ漫畫・ポスター集』です!!
カヴァーは、お気に入りのデーニ氏の政治漫画から「フランスに抱き込まれたポーランド」を採用。
少し序文を抜粋しますと……
本輯に収めた百六十有余種の画は、主として、ポロンスキイ編輯の下に三千部の限定版として一九二五年国立出版所から発行された「ロシヤ革命ポスター集」を初め、デーニの「政治漫画集」、漫画雑誌「ベズポージュニク」、その他編者が一九二三年と一九二八年の二回に亘ってロシヤを訪問した時に蒐集した資料の中から、特に永久に記念すべき芸術的なものだけを選んだ。その範囲は国内戦時代(一九一八─一九二三年)から今日に及び、種類は政治、風俗、戦争、時事、文壇、学生生活その他各方面に亘って広く網羅した。それ等の画に就いてはその場その場で一々簡単な説明はしておいたが、尚それ等の背景をなしている問題や事象に就いては、巻末の「ソヴェートロシヤ側面観」を一読されんことを希望する。
だそうで、十月革命後のソ連の現状を、政治・風俗・戦争・宗教・文壇・その他あらゆる視点から、160点以上の政治漫画や革命ポスター、また写真等も用いて昇氏が逐一解説しています。
図版部分はキャプション程度の長さのものが多いですが……
と、こんな調子で、ざっくばらんな解説が続きます。
これは当時のロシア文壇の面々の似顔絵です。原本では、トレーシングペーパーが掛けられて、どの絵が誰だか分かるようになっています。電子書籍では、図版を薄くして文字を載せたものを先に配置し、頁をめくると文字なしの画像が現れるようにして似たような印象に仕上げています。
原本の写真です。観音開きで上にトレーシングペーパーが掛かっています。
この絵がなかなかの傑作で、当時のロシア文壇の勢力図をイラスト化したものです。解説の本文と合わせて読むと、痛烈な皮肉を込めて描かれていることが分かります。
その他、力強い漫画やポスターが盛りだくさん。
後半は、ソ連の現状を語る文章「ソヴェートロシヤ側面観」が70頁ほど続きます。
現代の観点から見て、内容的な評価はもひとつ分かりませんが……著者の、革命後のソ連に対する並々ならぬ熱い思いが伝わってきます。
昇氏は、ロシア文学の翻訳者というだけではとどまらず、ロシア(又は旧ソ連)の芸術・風俗・政治・宗教など様々な面での紹介者でもあり、陸軍幼年学校の教授も務め、ニコライ正教会の熱心な信徒でもあり、また戦後は故郷である奄美群島の本土復帰運動に尽力したという活動家でもあり、と……なかなか興味の尽きない人物なのです。
昇 曙夢(のぼり・しょむ)1878年7月17日―1958年11月22日